ちわきにくおどる

そんな気持ちにさせてくれ

本能バースト演劇「sweet pool」感想

 

2022年になってから毎月「この舞台最高!みんな見て!」と言い続けているので、こいつハードル低いな、と思われてそう。

でも月一でテンション振り切れる舞台に出会えてることに感謝することにします。

 

 

 

 

はじめに※書いてる人の前知識を説明しているだけなので別に読まなくていい項目です。

キラル作品好きで全作品プレイしてるけど、全部一周しかプレイしてないし、スイプはクリア後情緒ぐちゃぐちゃになったから再プレイに躊躇って数年経ったので大まかな記憶しかないです。舞台見ながら思い出した箇所がいくつもあった。

睦ENDも善弥END好きだけど、原作が哲蓉一択すぎて哲蓉のことしか考えられなかった。

スイプはBLだからというより哲蓉の性愛入り混じった言語化の難しい関係が好きで、グランドエンドの衝撃がずっと忘れられない特別なBLゲームです。

「恋ではなく、愛でもなく。もっとずっと、深く重い――」

 

メイン4名は砂川くん以外は他舞台で何度か見ており、ドマステは配信、中屋敷さんの劇団作品も配信でちょこちょこ観ています。

 

 

 

はじめに2

原作が成人向けBLゲームであり、性描写を外せないストーリーで、舞台でもセックスシーンがあるので当ブログも直接的な表現で説明するのでご注意ください。

また褒めていてもハラスメントになるのを念頭にしながら書いています。でも基本はセクシーで最高だよ!演技上手すぎ!表現がすごい!のとにかく褒めたい純粋な気持ちです。信じてほしい。使っている言葉は直接的でも俳優さん方を性的な目で見ていないんです!本当です!演技と表現力を誉めているんです!!信じて!!!

 

 

共通ルート・哲雄ルート

共通ルートはなんといっても風呂のシーンですね。

白乳色の湯が入った透明の浴槽セットの中で、入浴中に発作で自慰をしてしまう場面を湯に浸かりながら上半身の艶かしい動きで魅せてくる圭登くんの身体表現が上手い。ダンスを模した動きでエロティックに魅せてくれてくれます。

ストリップ劇場に何度か行ったことがあり、一度だけ踊り子さんが自慰表現のショーを見たのですが、スプステのこのシーンがほぼ同じ表現だったので初見の時は脳内で「ストリップじゃん!」と叫びました。脱いではいないんですが。

ストリップというと、服を脱いで裸になる印象が強いのですが実際ショーを見ると踊り子さんがいかに自身をセクシーに見せるか動きで表現する場面が大多数です。脱いでいく過程から裸になった後も、手つき腰つきと自身の体を性的に美しく見せるかがメインになります。方法は踊り子さんによって違いますが基本的な動きは共通していて、それがスプステで蓉司を演じた圭登くんも似た表現だったので「ストリップじゃん!」と思ってしまいました。ストリップじゃなくてもバーレスクに馴染みがある人はバーレスクに見えていた感想もちょこちょこあったので、エロティックな表現の行き着く先は男女関わらず、ここになるんだなと知見を得ました。*1

艶かしさを表現するには、踊れるダンスのジャンルと本人のポテンシャルが大きいと思っているので、なかなかここまでできる若手男性俳優はいないと思うので圭登くんはすごい。本当すごい。

湯に浸かるので、マイクは外し録音したモノローグを流すのですが、喘ぎ声はしっかりと発してくれます。マイクなしで劇場でも聞こえるほどの声量ですが、大袈裟な声ではなく、我慢するが漏れてしまう抑えられた嬌声で、微妙な匙加減が上手すぎてどう調整されているのか不思議に思いながら感心していました。配信でもちゃんと拾われていて、すごいですよね。この技量。

原作をプレイした方はBLゲで数多の男の喘ぎ声を聞いていて耳が肥えていると思うのですが、聴き慣れた人でも上手いと思うくらい、櫻井さんの声は非常に艶がありました。本当上手い。化学室の発作も同様に上手い。

 

哲雄は台詞が少ない上に無表情なので演じるのがむずかしかったと思うのですが、砂川くんの体が誰よりも厚くてぱつぱつむちむち筋肉で一目で優秀なオスとわかる体格でした。先輩方に囲まれながら圧倒的攻めキャラを演じなければならず大変だったと思いますが、体格を仕上げてきてくれたので立ち姿で全てをねじ伏せていました。

原作だと最後まで朴念仁な印象がありましたが、蓉司に「帰れ!」と言われた時にしおしおするワンコ感は砂川哲雄の持ち味で高校生らしさが見えました。

EDとカテコダンスで愛おしげに蓉司をみつめるのが切なさ増してよかったです。

 

圭登くんの喘ぎ声も良いですが共通ルートに姫谷が善弥の眼球を舐めるシーンがあり、そのシーンの宇野さんも色っぽくてよかったです。

眼球を舐められる際に、姫谷の背や首に回した手指やその動きが艶かしく、その後善弥がスラックスのファスナーを上げながらはけるなど間接的な表現でこちらの想像を刺激してくれるのが素晴らしかったです。

宇野さんのインライを見た限りでは意図的のようですがその真意は現在わかっていないので、いつか聴ける日を楽しみにしています。ちなみにわたしは自慰描写だと捉えています。

 

哲雄ルートに分岐し、クライマックスに向けてギアチェンジするのは蓉司と唯一の肉親、姉から自分の名前の一部をとった子供の名付けを伝えられるシーンで全てを包み込む強さを枝里香役の永田さんが優しいながらも芯の通った演技で見せてくれたからだと思います。ここでゲーム内BGM「fade」が流れるのもよかった。曲中の不協和音が不安定ながらも美しくてスイプの世界観を表していて、印象強く好きなBGMです。大千秋楽ではここからずっと泣いてた。

 

畳みかけるよう同病院に入院している睦に会いに行く場面へとつながるのですが、ラストを知っていると睦とのやりとりが全て胸を締めつけてきて、良いんですよね。何かを悟っていると思わせる杉江くんの演技もよかった。悟っていなくても色んな想いを堪えているのを潤んだ瞳で伝えてくる演技がよかった。

 

幼い頃の事故の真相を知った蓉司が衝動的に哲雄に会いに行き、哲雄の部屋でようやく二人とも合意の上で身も心も繋がるのですが、このベットシーンがまーーーーぁ、演出の中屋敷さんの渾身の画角なんですよ。

互いの服を脱がせる描写が色っぽくてゆったりとした時の流れを感じさせて素敵で、ここからの二人の絡みのダンスとリフト技が見ていて気持ちいいほど決まっていくのでセックス表現のダンスですがどこか爽快感がありました。コンビネーション(?)のつなぎもだんだん自然になりよかったです。初見時は俳優に求めすぎかなー、と思っていたので。

ダンスからのベッドインでさらに体を重ねる直接的な表現に移っていくのですが、メインルートのクライマックスセックスなので画角への並々ならぬ熱意がありました。

最後の騎乗位フィニッシュで仰け反る蓉司の背中のラインの曲線美とライトニングされセットに大写しされる影との対比が綺麗に決まっていて、スプステにおける官能美と愛し合う哲蓉の切なさが融合したワンシーンでした。

フィニッシュも素晴らしいのですが、個人的に最も興奮したのはその一歩手前の背面座位です。

哲雄に後ろから抱きかかえられた状態で蓉司が堪えきれず喘ぎながら、布団を掴んで体の中心部に引き寄せる流れが天才でした。隠すことにより、我々は脳内で完成形を補完することができるのでこちらの想像力を信じてくれた中屋敷さんに感謝です。それぞれの目に思い思いのものが見えたのではないでしょうか。秘すれば花。(姫谷役福地さんのツイキャスで学びました)

 

「sweet pool」はセックスシーンなしではストーリーが生まれないので、本気で官能美を表現してくれた演出と役者方に感謝しています。制作側が熱意を持って真面目に突き詰めてくれたからこそ、客席側も全力で受け止めて観ていたと思います。わたしの体感ですが。

 

化学室での儀式の際の善弥と姫谷は善弥ルートにて述べています。

 

熱いベッドシーンがあったからこそ屋上でのセンチメンタルがより強く感じられました。

舞台ならではの表現が多い印象でしたが屋上での「永遠なんてない」はスチル完全再現に振り切っていたように見えました。照明スタッフさんありがとうございます。

 

グランドエンドの終わりといえば、最後に一瞬だけ見える蓉司の姿に情緒をぐっちゃぐちゃにされるゲームの演出が神がかっていたので、初見時は物足りなさを覚えていたのですが、舞台では蓉司の記憶を哲雄は取り戻せたと解釈することもできてハッピーエンドに捉えられました。

最後に蓉司が願った「もう一度、名前を呼んでほしい」が哲雄の「蓉司」とつぶやく台詞ですべて救われているんですよ。(説明をすべて放棄しました)

ここのテキストほぼ忘れているので再プレイします。*2

 

大千秋楽のカテコで圭登くんが一部踊らず立ち尽くしたのは最後だからあえてグランドエンドの蓉司を表現したのかと思ったらインスタ投稿で自然なものだったとあり、二段階で感動と興奮で泣きました。

https://www.instagram.com/p/CbefTDopdaL/?utm_medium=copy_link

 

砂川くんも泣いてはいけないと思いながらも溢れるものを抑えられず、一筋涙が頬を伝うのが美しかったです。

劇場というひとつの空間でみんなで一種のトリップ状態になるくらいの没入感が最高によかったです。こう書くとちょっと危ない感じですが、この高揚は滅多にないので上記の表現を選ばせていただきました。

 

 

 

 

睦ルート

ラストのEDダンスが一番好きなルート。

睦の手の届かない場所で、睦の目の前で哲蓉が始まるのでNTR大好きは大興奮でした。

個人の趣味はさておき、睦ルートの概要を濃縮した優れた構成でした。

 

杉江くんはどの現場でも反射神経がよく、頭の回転が速いので、唯一の陽キャとしてホラーな作風の中、アドリブ等日替わりで息抜きをしてくれて安定していました。

睦ルートといえばカニバENDですが、直接的な表現を削るとBSSが強調されて切なくなる印象でした。

 

共通ルートと被る場面ですが、化学室で蓉司を壁に追い詰めた時に視線を落とさず壁を蹴るタイミング、強さ、音の立て方が完璧でテンションクライマックスになりました。苛立ちを表す一蹴りが決まっていました。

丸くて大きい目が見開かれているのに光がないのもよかった〜。

キレてからややもったりする言い回しなのが少し気になっていたのですが千秋楽では、はっきりした口調に変更していたので最後に好みの芝居がきたのもうれしかったです。

 

だからこそ杉江睦のカニバ演技が見たくて暴れてしまいましたが、カニバENDの印象が強く残ったプレイ時とは違う、一番蓉司と一般的で良好な関係を築けたかもしれない睦が一番取り返しのつかない結末を迎え、切なさで視界が滲んだのは杉江くんの芝居の力だと思います。

 

 

 

 

善弥ルート

宇野さんの善弥を褒め讃えたくてこのブログ書いている節があります。

 

善弥ルートは今回、原作者の淵井さんによる書き下ろしがあり新規エピソードによって善弥の人格形成過程が判明し14年前に発売されたゲームのキャラクターの解像度が上がるという稀有な現象がありました。

この書き下ろしにより善弥の人間らしい愛への渇望を理解することができたのですが、プラス宇野さんが善弥を「普通に愛されたかった子」と解釈し彼を愛し、それを見事にお芝居に体現し舞台ならではの善弥を顕現させました。

原作物や特に2.5舞台は再現度が評価されがちですが外見や声を原作に寄せながらもトリッキーなキャラとカテゴライズされがちな善弥を「普通の人」として解釈し演じたことで、人間味が強くなり、深みが増し、よく言われる「キャラが生きている」という定型文以上に血の通った生きている人間として現実に存在させ、着ぐるみではなく役者が演じる意義を強く感じたのは始めての経験で、心酔するように善弥目当てで追いチケをしていました。

 

幼少期の誕生日エピソードから父邦仁はわずかな違和感はあるものの確かに善弥を愛していたし、善弥が出来損ないのオスだとわかった時も利己はあるが善弥本人を思い、祈りを捧げていたことが読み取れ、姫谷も仁義を尽くしてきた邦仁とその息子の善弥を大事な存在として愛を与えてきたけれど、善弥には確かに信じられるものとして届かなかった翁長家の不器用な愛にただただ無力さを感じさせ、哲雄ルートの姫善の感動につながる層となりました。

善弥ルートだけでも解像度が上がりますが哲雄ルートでも解像度が上がる素晴らしい新規書き下ろしでした。

しかも幼児宇野善弥の演技がバリ上手い。

 

このエピソードの力もありますが、邦仁に「出来損ない」と初めて言われた時の善弥の怒りと、勝手に「出来損ない」とされた悲しみが宇野善弥の鬼気迫る芝居に凝縮されていて、観客の心を強く動かしたのだと思います。


哲雄ルートのラストですが、この書き下ろしエピソードで善弥が家族からの愛を求めていた背景を知ってから見る化学室での姫谷とのシーンは原作プレイ時と違う印象をあたえてくれました。

最後に姫谷からとっさに「ぼっちゃん」ではなく「善弥」と名前で呼ばれることにより善弥はずっと欲していた愛を手に入れて、満たされた泣き顔で死んでいく姿がとても美しく写りました。日々くちる肉体からの解放ではなく、最期に欲しかったものを手に入れたことによる、死は救済。

 

絡みのダンスはイマラが上手で見ると蓉司の顔が全く見えず、櫻井くんのくぐもった声が上手くて非常に映えていました。その後の櫻井くんが床から上下逆転して宇野さんの背に乗る流れ(伝われ)が理解するのに時間かかるほどつなぎが上手くてよかったです。初めて見たのもあるけど。

EDダンスも回を重ねるごとに宇野さんの中の善弥が自由に動いているように動作が足されて完成していくのも、なまものの楽しさがありました。

 

スイプのストーリー性やタイミングもありますが、デビューのテニミュから見ていたのに、役者としての宇野さんの凄さを巡り巡って思い知らされた舞台でした。

挨拶の言葉選びが素晴らしいのは当時から周知しており、今でも覚えているほど印象強い挨拶の、分かれたハードルが再び現れたタイミングがスプステなんだなあ〜と思いながら通う日々でした。

 

善弥の魅力と、それを引き出した宇野さんのお芝居が双方でなんかすごい力になって、やばいことになり、すごいものを観させてもらいました。(説明放棄)

大袈裟な表現は好かないですが同じ体験は二度とないと思うほどインパクトがすごかった。

宇野さんも素晴らしいですが、キャスティングした方に感謝。大成功です。

 

 

 

攻略対象のメイン4名キャストを中心に感想を書きましたが、他4名も原作そのまま、または舞台特有のキャラクター像を作り上げていて、銀劇を出演者8名で空間を埋められたのは一人一人の力量が高かったからだと思います。

 

オタク人生に深く刻まれた原作同様、スプステもオタク人生に深く重いものを残していきました。

スプステ𝑳𝑶𝑽𝑬。

 

*1:※ストについては数回しか見たことないド浅知識なので、鵜呑みにしないでください。私から見えたもので正解ではありません。

*2:公演中各ENDだけ見ようと古いPC引っ張りだしたら容量の関係でコンプしたPCゲーム全部アンインストールしてた。え~ん。ばか。